「それは…血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ…」
ウルトラセブンの主人公、モロボシ・ダンのセリフです。
名エピソードが多いウルトラセブン。
その中でも、屈指の悲しいエピソードなのが『超兵器R1号』です。
地球防衛軍は水爆の8000倍の威力を持ち、星一つ破壊できる新兵器、R1号を開発します。
その実験を、シャール星座第7惑星ギエロン星で試すことに。
そこは金星に似た灼熱の惑星で、生物はいないと思われたためでした。
新兵器の発明に沸き立つ防衛軍の面々。
その様子を1人、苦い顔をして見つめるダン。
「地球を守るためなら何をしてもいいのか」と周囲に尋ねます。
すると「兵器としてだけでなく、地球の力を示すことで平和にも繋がる」と答える開発者。
ダンは「そうなれば侵略者はもっと強い兵器を作る」と反論。
それにフルハシ隊員は「そうなればこちらはもっと強い兵器を作る」とさらに答えます。
それに対して呟いたのが「それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ…」
この一連の流れが序盤に繰り広げられ、結局はダン1人が反対しつつも、ギエロンに向けられてR1号は発射されてしまいます。
そして実験は成功、惑星ギエロンは粉々に砕け散りました。
沸き立つ司令室。
しかし直後、惑星ギエロンの破片から飛び出した飛行物体を観測した観測艇の通信が途絶えます。
真っ直ぐ地球に向かってくるその影は、ダンの報告により、巨大な生物であると判明。
惑星ギエロンには生物がおり、R1号の影響で突然変異を起こしてしまったことが分かったのでした。
地球に降り立ったギエロン星獣。
街へ向かう前に、ウルトラホーク3号に搭載された新型爆弾で木っ端微塵に。
呆気ないと思われましたが、深夜驚異的な生命力により復活。
次の日には再び元の姿に再生します。
最早ウルトラホークの爆弾も効かず、それどころか口からR1号の放射能を含む黄色の灰を撒き散らし始めました。
このままでは東京は、自らの兵器による汚染により住めなくなってなってしまいます。
焦る司令室。
開発者の1人であるセガワ博士は「この危機を救えるのは超兵器R2号だけです」と進言。
マエノ博士は「でも、それでさらに巨大な姿に変化したら…」と苦言を呈します。
それに対してセガワ博士は「マエノ君、東京はただでさえ危険なんだ。私はR2号の破壊力に賭けてみたい」と答えます。
現場では司令室での会話などいざ知らず、ダンはセブンに変身。
ギエロン星獣に戦いを挑みます。
アイスラッガーを弾き返す頑丈な体と、腕から発射するビームでセブンを圧倒するギエロン星獣。
光を反射する体を使って目くらましをするなど、善戦します。
しかし片翼をもがれ、弱点である頸動脈をアイスラッガーに切られたギエロン星獣。
最期は黄色い血を噴き出しながら、花に囲まれてゆっくりと目を閉じ、息を引き取るのでした。
一連の事件を受け、R2号以降の開発計画は凍結。
それを聞いて喜ぶダンが、滑車を走るリスを眺めて物語は幕を閉じます。
地球人の作り出した兵器により、自業自得とはいえ地球を危機に陥れてしまった防衛軍。
司令室での問答ですが、惑星1つを破壊できる爆弾を地球上で使うという発想自体が既に狂気の沙汰ではありません。
仮にギエロン星獣を倒したとしても地球は木っ端微塵。
失策どころではありません。
自らの失態に、放射能の灰と、焦っていたのでしょうか。
この作品自体名エピソードではありますが、ツッコミどころも多く、ファン間で考察されています。
なお、M78ワールドとして世界観を繋げるウルトラマンメビウスの小説では、トリヤマ補佐官の同期がこの時の放射能でいまだに苦しんでいるとのこと。
放送当時、世界は冷戦の真っ只中。
その当時唱えられていた、核抑止論に対するアンサーがこの回です。
A国が核兵器を持てば、B国も…。それに対してA国は更に強力な兵器を…。
と、武力拡張にはキリがありません。
しかし、武力を完全に捨て去る、ということも容易ではありません。
冷戦も終結した現代。
私たちは未だ、血を吐きながら続けるマラソンを走っています。
コマの書き散らし
好きなことを書いていく 特撮/オカルト
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